監修 服部 正策 東京大学医科学研究所・奄美病害動物研究施設
奄美大島の森林は広く深い。その林内にはアマミノクロウサギをはじめとして多くの特異な固有種が暮らしている。今から数百年前第三紀中新世以前、奄美大島が台湾を経てアジア南部と陸橋によりつながっていた時代に渡ってきた動物たちの遺残種である。この島に住むヘンな動物たちは奄美大島が離島でなかったら、より進化した繁殖力の強い種や肉食獣によってとっくに滅ぼされていたはずである。さらに、島には最終捕食者としてハブが林内から海岸まで広い範囲に高密度で分布していた。ハブはその攻撃力により、その後島に侵入したであろう多くの動物が林内にまで分布を広げることを拒んできた。奄美の固有種たちは林内でハブとの共存に成功したことにより、現在まで生きながらえて来た。しかし現在、奄美大島の固有種は人間のもたらした移入動物や開発により存続の危機に直面している。この生態系を未来に引き継ぐことができるかのカギは我々人類にゆだねられている。