ニホンザルの生態を通して、生命と性の関係を明快かつ、斬新に描いた『ゴンはオスでノンはメス』(和秀雄著 どうぶつ社刊)という一冊の本があります。
 本編では、この本を原作として長期にわたる野生ニホンザルの記録映画をもとに、四季折々の情景を交え子ザルの成長過程を追います。そして、オスとメスのからだの違い、性交、生命の誕生のしくみ、出産などを、コンピューターグラフィックやイラストを用いながら分かりやすく表現しました。この映画は、おもに小・中学校での性教育教材、及び広く一般家庭向けに製作された作品です。




 深い森のなかに、50頭ばかりのニホンザルの群れが暮らしています。
 生まれた子ザルは、1歳ころまではオスもメスもなく一緒に遊び、群れで暮らすルールを覚えていきます。けれど、生まれた時からオスとメスの違いははっきりしています。
 出産の季節、春。この群れに今年も数頭の赤ん坊が生まれました。オスザル「ゴン」とメスザル「ノン」の誕生です。
 三年目を迎えたゴンとノン。このころには、オスとメスはそれぞれのグループに別れて遊ぶようになります。そしてこの年、ノンは初潮を迎えました。
 四年目。ゴンにも変化がみられました。精通です。ゴンはこの年の秋、ほかのオスザルと同じように、生まれた群れを去りました。
 同じ年の秋、ノンは交尾をしました。秋は、ニホンザルの交尾の季節なのです。
 交尾をしたノンの体のなかでは、精子と卵子が受精し新しい命が誕生し、育まれています。そして翌年の春、ノンは出産しました。ノンも娘から母親になったのです。
 ゴンとノンが生まれ育った深い森のなかで、今年もまた新しいゴンとノンが誕生しました。