プロローグ 初夏の富士山
ゆるやかで広大な裾野をもつ富士山 ― 野鳥たちは標高差にして3000mもある山麓を上手に棲み分け、暮らしている。

低地帯
 カッコウやカワセミ、カルガモなど、馴染みの野鳥が暮らしている低地帯。富士五湖の河口湖や東洋一の湧水量を誇る柿田川などがこの辺りだ。オオヨシキリ、コムクドリの子育て、ササゴイの採餌などを見ることができる。ちなみに、川のない富士山では降った雨が地下に潜り、伏流水となってこれらの場所に湧きだしている。
オオヨシキリの子育て オイカワを捕ったササゴイ コムクドリの子育て
山地帯
 山地帯には最も数多くの野鳥が生息する。森の小さな湧き水には、シジュウカラやメジロ、キビタキ、クロツグミ、オオルリ、コゲラなど十数種の小鳥たちが次々にやってくる。命の水を求めて…。北富士演習場のある梨が原には、ノビタキ、ホオアカ、コヨシキリ、モズ、オオジシギが生息。猛禽類のノスリまで姿を見せた。

オオルリ キビタキ ノビタキ
亜高山帯
標高1500mから2500mに至る亜高山帯は初夏、野鳥たちの天国になる。コマドリ、ウソ、メボソムシクイなど。水場には、日本で最も小さな野鳥キクイタダキをはじめ、カヤクグリ、ルリビタキ、ホシガラスといった鳥が水浴びにやってくる。今では歩く人も少なくなった旧登山道にも、多くの野鳥たちを見ることができる。
キクイタダキ コマドリ カヤクグリ
高山帯
 森林限界を超えた高山帯にも、繁殖している野鳥がいる。
 アマツバメは、火口にある断崖の岩の隙間に巣をつくって子育て。巣立ちビナは親鳥と共に天高く舞う。


秋〜冬
子育てを終えた夏鳥たちが去った秋。静かになった森で姿を見られるのはアカゲラ、コガラなどの留鳥たち。冬には湖にカモたちの群れ。山麓にはアトリ、マヒワといった冬鳥。そしてハイタカ。食物連鎖の頂点に立つワシタカ類は豊かな自然環境の証である。

ミコアイサ マヒワ ハイタカ
エピローグ
神秘に満ち溢れた樹海や変化に富んだ自然環境をもつ富士山麓。しかし今、姿を消しつつある鳥もいる。ブッポウソウ、コノハズク…。そんな中、山麓を離れた森でサンコウチョウと巣立ちビナに出逢えた。鳥たちの宝庫と謳われる富士山麓。今日も野鳥たちの賑やかな詩が聞こえる。
富士の樹海 忍野から見た富士 サンコウチョウ