渡り鳥たちの干潟―東京湾・谷津干潟―
監督/稲沼太郎
 埋立地が広がる東京湾。その一角に長方形に切り取られた海、谷津干潟がある。ビル、住宅、工場に囲まれたこの小さな干潟に年間数万羽の渡り鳥たちが訪れる。
谷津干潟には、カニ、ゴカイ、二枚貝など底生動物が多く棲む。潮が満ちてくるとハゼやボラの大群もやってくる。そんな獲物たちを求めてさまざまな渡り鳥たちが渡ってくる。
チゴガニ ヤマトオサガニ コメツキガ二
 3月の谷津干潟。ユリカモメ、セグロカモメ、ズグロカモメ。
ユリカモメ セグロカモメ ズグロカモメ
 5月。シギ・チドリの「春の渡り」。5000キロを越える旅をしてきたシギ・チドリたちはここで休息をとる。彼らが形の違うクチバシを使って採食する姿は興味深い。近くの三番瀬も貴重なエサ場。十分にエネルギーを補給し、シベリアやアラスカへと渡ってゆく。
 7月。シギ・チドリが北へ去った谷津干潟。カルガモの親子がのんびりとした姿を見せてくれる。 
 そして8月中旬、再び繁殖を終えたシギ・チドリがやってくる。「秋の渡り」である。休息を終え、秋が深まると南へ去ってゆく。かわって登場するのは「冬の使者」カモである。
 そして、時には極めて珍しい渡り鳥も現れる。ソリハシセイタカシギやクロツラヘラサギ。谷津干潟はこのように一年を通じ、渡り鳥たちの貴重な中継地となっている。
ミヤコドリ ソリアシセイタカシギ クロツラヘラサギ
 一時期絶滅寸前であった谷津干潟は、地域の人々の努力によって野鳥たちの楽園として蘇った。1993年には「ラムサール条約」にも指定された。

奇跡的に残された小さな干潟、谷津干潟。このような日本の干潟が消滅することになれば、仮に世界の繁殖地が保護されたとしても渡り鳥たちの生命は脅かされる。干潟のもつ意味は大きい。